死体を買う男-歌野晶午-

死体を買う男 (講談社文庫)

死体を買う男 (講談社文庫)

あれえ…?
さっきまで打ってた感想文が一気に消えました・・・・。
なんで?・・・私なにかしたっけ??…あ理由が分かりました。説明しづらいけど

・・・気を取り直してえーと。

この「死体を買う男」を買うまでに何度か文庫本コーナーをうろつき、買おうか買わないか、次にしようかとかと、早く買えよと思われるかも知れませんが私金欠だったので悩んでまして、でもどこかの文庫本コーナーに行く度目に入っていたので買うことにしたのでした。
読了後、それを思い出して「やっぱり自分にとってイイ本は何度も目につくものなんだv」となんとなく得意になっていた私です。
それくらい良かったです。
ただの双子トリックと思うことなかれ。

他の歌野さんの著物は違うらしいですが、この死体を買う男は江戸川乱歩調の文体で、乱歩好きの私にとって嬉しかったです。すごく読み易かった。
小説には、架空の登場人物として江戸川乱歩萩原朔太郎が登場します。
私は、萩原さんのものは1つも読んだことが無かったので、先入観を付けないためにも読んでおいたほうが良かったなあと思いました(ただこれを読んですごく興味を持ったので今度読みます)。
また、この小説は小説の中の「小説」と「現実」で構成されてあり、その点も複雑です。

↓以下ネタバレ部分は反転文字の為空白、読了した方だけひっくり返して下さい
最初は、乱歩が軽く(?)投身自殺を図りそれを直青年に止められるところで、そこでの乱歩の言い訳が…
これじゃ乱歩がちょっとアホみたいだし、それより前に自殺しようまで追いつめられた人間があんなに簡単に止める訳ないし、自殺願望があるのをナメてるのか(←?)くらいに思って、ダメだこれは乱歩と萩原さんをつかって乱歩調な小説に仕上げただけで
そんな大したことない(通常の2倍くらいの帯をつけるに及ばない)小説なんだ、と早々に決め付けて読んでいました。
まあこういうところが、なんでも私の悪いところなのですが・・・
(ただあそこは、最後まで読んで、あそこで直青年の言う「死にたくないのに死んでしまう人間もいるんですよ」が良く分かって満足です。)
乱歩にああいうことをさせないといけなかったのとかはそのうちよく分かってくることでした。
性格が軟弱なのは萩原さんと対比させて書かなきゃ面白味に欠けるとかでしょうか。うん(?)。

その次に「は?」と思ったのが、直青年と思われる人物が自殺してしまった時、その直青年の部屋に行ってみると直青年と顔形のそっくりな人物がいるのを見つけた時の乱歩の反応。
いやいやいやいや。「奇蹟が起きたんだね」は言わないでしょうと苦笑しましたが、あれも物語を盛り上げる為だったんでしょう、全体的には素晴らしいから問題ありませんよね(それにしてもラストを考えるとあの演技も凄かったですね)。

その後は、ただのオマケ程度と思っていた西崎と細見が登場したり、直青年と幼馴染と言う雪枝さんが登場して驚くべき話をしてくれたり、あれはちょっと驚きました。
(ラストを思って考えると、雪枝さんが直さんに告白した時の暗い顔の意味や苦悩がありありと浮かびました)

その少し後、ゴム毬の話が出てきた時に、やっぱり直さんは生きてたんだ、想像通りだったと思い。
そうしていたら死体が発見され、あれえ…??。

ほんとうに、中々決着がつかないところがこの小説の一番面白いところです。
普通のミステリの2,3倍イロイロある気がします。あれはすごい。

あと、220ページの2人の木に話しかけるところがユニークでした。

その後、「鬼」の最初で、どうして直青年が均青年を殺して相手を自分の身代わりとしたのかと乱歩が考えるところがありますが
あれは私にとって不自然で、それは雪枝さんと一緒になるためだけに必要だったと言えば、例えばそれをせず駆け落ちをするにしてもそれなりのリスクはある訳だから、そのくらいはおかしくないんじゃないかなあと思っていました。
でも、そこで不思議に思わなければならない理由がラストで明かされるので、後で納得しました…けどあそこはちょっと不自然な「謎」かも・・・。

西崎の最初に書いた「白骨鬼」のラストで
夢物語でいいのだ。
夢物語でいいのだ。

・・・で終わりますが、あれはなんとも…その後の細見辰時の「ほんとう、過去」と比べての皮肉だったのかと思います。

まさか細見さんが均さんだったとは・・・
うーん。
これを読んでからだと、他のミステリを読んだ時に驚きが少なくなるかも知れない。